図書館で借りたので2週間以内で読み終えるという縛りがあったのですが…。
2週間で読み終えるのがもったいない作品でした。できることであれば、1日1章ずつ、1か月くらいかけてゆっくりと読むのが合っている本だと思います。それだけ、作中の空気もゆったりとしていますので。
そんなわけで、しみじみと丁寧に描かれた小説です。大きな事件は起きない、舞台は狭い、主人公はおじさんと、これでもかと設定が地味ですが、その地味さがイイのだ。派手なことは起きなくとも、日々のでき事が丁寧に描かれて、そこに対する様々な発見がしっかり描かれていたらそれでいいのですよ。まさに「文芸」であります。
ストーリーは、40代の地方小新聞の記者(独身・独り住まい)が、事情により生後数か月の赤ん坊の育児を任せられることなり、そこで変化する日常を描く、といったもの。
まあ、ストーリーはともかく、この物語の肝要は、題名になっている赤ん坊の「なずな」との育児シーンにあるでしょう。日々「更新されていく」存在である赤ん坊。周囲の空気を一変させ、その世界の中心になる赤ん坊。その空気の描き方が素晴らしいのですよ。
日常をここまで淡々としつつ、丁寧に描ける堀江さんの筆力は素晴らしいです。終盤、主人公の菱山の気持ちがひしひしとわかりましたもんねえ。そのあとやってくる結末は結末でしみじみしていて、いいなあと思いましたが。
育児は「孤独」とか「不自由」と言われたりしますが、菱山のように周囲の人に助けられたり、温かい目で見守ってもらえることが何よりの助けになるかもしれませんねえ。
とはいえ、現実はそんなに甘くないのかもしれないけどもしれませんが。
大変でありつつもそれ以上の喜びがあるのが育児なのだろう、と思います(まだ今は育児経験がないので何ともいえないのですが)。


















