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カウンターは2006/12/1より設置

Zくん(from デイリーポータルZ)

 
献血と名古屋グランパスが好きな図書館司書の日々(誤変換多数)。
なずな/堀江敏幸
堀江 敏幸
集英社
¥ 1,890
(2011-05-02)

去年の「本の雑誌」年間ベストになっていたのと、内容に興味をもったのとで、久々に堀江敏幸作品を読んでみることに(ずいぶん昔に「雪沼とその周辺」を読んだ)。

図書館で借りたので2週間以内で読み終えるという縛りがあったのですが…。
2週間で読み終えるのがもったいない作品でした。できることであれば、1日1章ずつ、1か月くらいかけてゆっくりと読むのが合っている本だと思います。それだけ、作中の空気もゆったりとしていますので。

そんなわけで、しみじみと丁寧に描かれた小説です。大きな事件は起きない、舞台は狭い、主人公はおじさんと、これでもかと設定が地味ですが、その地味さがイイのだ。派手なことは起きなくとも、日々のでき事が丁寧に描かれて、そこに対する様々な発見がしっかり描かれていたらそれでいいのですよ。まさに「文芸」であります。

ストーリーは、40代の地方小新聞の記者(独身・独り住まい)が、事情により生後数か月の赤ん坊の育児を任せられることなり、そこで変化する日常を描く、といったもの。
まあ、ストーリーはともかく、この物語の肝要は、題名になっている赤ん坊の「なずな」との育児シーンにあるでしょう。日々「更新されていく」存在である赤ん坊。周囲の空気を一変させ、その世界の中心になる赤ん坊。その空気の描き方が素晴らしいのですよ。
日常をここまで淡々としつつ、丁寧に描ける堀江さんの筆力は素晴らしいです。終盤、主人公の菱山の気持ちがひしひしとわかりましたもんねえ。そのあとやってくる結末は結末でしみじみしていて、いいなあと思いましたが。
育児は「孤独」とか「不自由」と言われたりしますが、菱山のように周囲の人に助けられたり、温かい目で見守ってもらえることが何よりの助けになるかもしれませんねえ。

とはいえ、現実はそんなに甘くないのかもしれないけどもしれませんが。
大変でありつつもそれ以上の喜びがあるのが育児なのだろう、と思います(まだ今は育児経験がないので何ともいえないのですが)。
| 読書 | 01:50 | comments(0) | trackbacks(0) |
砂漠/伊坂幸太郎
伊坂 幸太郎
実業之日本社
---
(2005-12-10)

伊坂幸太郎の未読作品をぼちぼち減らしております。

ということで、今回は「砂漠」。前回読んだ「あるキング」とは違って、ファンが伊坂さんに求めてるのはどっちかっていえばこういう作品だろーなーという感じ。
軽妙洒脱な会話、センスフルな引用群といった伊坂小説の特徴が満載です。

どこか俯瞰的にものを見る主人公北村。
クールビューティ・東堂。
小規模な超能力者・南。
熱くて暑い・西嶋。
いきおいとおちゃらけ・鳥井。
主人公の恋人・鳩麦。

東西南北と鳥が苗字に入っている登場人物達である。でもって、作中ではよく麻雀を打っております。麻雀のルールが分かるのとわからないのでは楽しみ方が違うのかな。私は大学時代によく麻雀を打ってましたので(とっても弱くてカモ扱いでしたが)、少々突っ込みどころもありつつも楽しく読めましたよ!
「言い訳を考えるゲームだ」という作中の鳥井のセリフは全くその通りですねえ。言い訳しまくってましたわ・・・。

でもって、春夏秋冬の四本立ての連作仕立てになってます(季節牌ってことなのか?)。
春夏秋冬でいろいろ事件が起こるわけですが、冬でいろいろと締めくくられれ、最後の春がエピローグ。この終わり方が他の作品ではあまり見られないすがすがしさがあります。
あと、冬の途中まで読んでみて「ああ、春夏秋冬ってそういうことでもあるのね」ということが分かります。この辺うまいなあ。となると、鳥井は勉学でもすさまじい努力をしたんだな、とか、そういえば途中で受けてた講義が一般教養じゃなかったな、とかそういったことがもわかって来たりする。

にしても、伊坂さんは西嶋という人物を描きたいからこの作品を書いたように思ってしまうんだが、いかがなものでしょうか。逆にこの小説に西嶋がいなかったら、フツーの大学生活小説でしかなかったようにも思うくらいですからねえ。

あと、他の伊坂作品みたく映像化されてもまったくおかしくないんだけども…映画よりも連ドラのが向いてるように思いますが。

| 読書 | 00:59 | comments(0) | trackbacks(0) |
あるキング/伊坂幸太郎
伊坂 幸太郎
徳間書店
¥ 1,260
(2009-08-26)

伊坂幸太郎の作品の中ではあまり「ファンのいない」印象を受けるこの作品。
読み始めてみると意外なまでにあっさりと読み終えてしまいました。

読んでみて、「なるほど、確かにファンは多くなさそうだ」と。伊坂作品ファンが求めているものがあまりこの作品にはなさそうだからねえ。他作品とのリンクもないし、センスを感じさせる映画・文芸作品もない(出てくるのは「機動戦士ガンダム」とシェイクスピア)。特に従来読者のうち女性からの受けが悪そうな…。主人公王求のことがに共感も理解も難しい感じですし、女性登場人物に魅力的なひともいないしねえ。とにかく全体的に気持ち悪いというか不穏なトーンが漂っております。

個人的には好きですよ。いいじゃないですか、こういう寓話で悲劇で伝記かつ、シェイクスピアのオマージュって中々読めないですよ。予定調和ばかりじゃつまんないですし。
キングスのことについては、いつぞや負けまくったけど黒字だった仙台の某球団のことを揶揄してるのかと思ったけど、そういうわけでもなさそうですね。むしろ…ゲフゲフ。

| 読書 | 21:12 | comments(0) | trackbacks(0) |
ブンデスの星、ふたたび/井上尚登

ホペイロ坂上シリーズ3作目にして最終作。

JFL・J2ときてJ1編。坂上さんの所属するビッグカイト相模原は残留争いするチームとして描かれ、相変わらず、ピッチ外で起こった不思議を解決する連作短編となっております。

全2作以上に「別にこれJリーグ舞台じゃなくてええやん」という話は多くなっているような気がしなくもないですが、まあ登場人物のキャラが立ってきたということの裏返しなのかもなぁ(個人的には慈社長がイイですね。ああいう社長よこせとリアルで思っているサポは多いんじゃないかな)。
それぞれのエピソードはネタバレになりかねないのであまり踏み込めない…。

物語としても大団円。きれいな終わり方を見せて終わりました。こういうほのぼのほんわかしている、ピッチ外が中心のサッカー小説ってこのほかにあまり知らないので、完結がちょっと残念です。
殺伐としていない、女性や子どもだけでゴール裏に来れるスタジアムであるから、こういう小説が生まれるのかな。とも思いました。

| 読書 | 20:59 | comments(0) | trackbacks(0) |
今年もよろしくお願いいたします

12/29から1/3までの年末年始の休みは、ほとんど寝るか食べるかテレビ見て、たまに掃除したり、買い出ししたり、思い出したように近所に初もうでに行ったりして終わりました。明日から仕事なのが信じられません。

やはり無理やりにでもイベント感を自分で演出しないと年末年始を過ごしている実感は薄くなるものですな(昨年は大掃除やら年明け早々甘酒&初詣やら、近所の海岸に初日の出みにいったり、福袋を買いに行ったりした)。まあ、家族と一緒にのんびりしてる時間が長かったから、それはそれでいいのかなと。

ともあれ、2012年もよろしくお願いいたします。
ブログは相変わらず読んだ本の感想が主になると思います。

| 日記・たわごと | 20:50 | comments(0) | trackbacks(0) |
くちびるに歌を/中田永一
中田 永一
小学館
¥ 1,575
(2011-11-24)

中田永一の最新作。なんとテーマは合唱。

乙一のデビュー当時からのファンで、合唱をやっている私としては、この組み合わせはたまらなすぎる。でもって、作中で取り上げられている曲はいつぞやのNHKコンクールの課題曲「手紙」である。この曲今練習してるよ…。なんとまあ。どこまでツボを押してくる気だと。
んで、読み始めたら、そのまま最後まで一気読みでした(文章読みやすいし)。
というわけで、冷静な評価は下せません。合唱未経験者の方が読んでどう思うのか、とかまったくわかりませんしねえ。でも版元は本屋大賞狙いなのかな、という気もした(TVCM打ったりする所とかね)。

舞台は長崎の五島(この舞台立てもあざとい…!)。主人公は二人、もともと合唱団員だった女声と、ふとしたきっかけで合唱団員になる男声(合唱やってるとこう書きたくなる)。
相変わらず男の主人公がクラスの隅っこにいそうなところ以外は、内容は超絶な「白乙一」作品で、ファンタジー的要素は皆無(まあ一部やりすぎだろーってシーンもなくはないけどねえ)で、さわやかな青春小説になっています。中田作品はファンタジー成分少な目で地に足ついてますなあ。
合唱やってる身としては、発声練習の「シュー」と音を立てるブレス練習やら、「信長貴富」って単語が普通に出てくるところやら、コンクール当日のタイムスケジュールやらもさることながら、経験者なら「そうだよねー」と思う描写の多いこと多いこと。たとえば「百回のうち九十五回は平凡、四回はだめ、一回は神がかった何かを感じる」とか、合唱やってると実際そんな感じがする。それ以外にも「あーそうだよねー」と思う描写が結構ありますよ。
あとは「合唱ほど男性がいるかどうかで大きく変わる部活なんてない」というのにハッとしましたねえ。ずっと混成だったけど、学校の合唱団で男性が「拒んでいるわけではないが入ってこない」がために女声合唱団となっている団体もそれなりの数ありますからねえ。あと、男声と女声のけんかとかも普通に作中にあるみたいな感じでありそうだ(笑)

ネタバレになるのでいろいろ書きづらいですが、「手紙」の曲に歌われていることをストーリーに織り込んだ構成と、相変わらずの細かい伏線の忍ばせ方がお見事。忍ばせておいた伏線が一気にはじける終盤の展開がずるい。合唱やってた身としては、あのシーンはうんうん、そうなんだ、周囲のみんなも一緒に歌えるんだから合唱っていいんだよと思ったよ。
でもねえ、自由曲の扱いはあれでいいのかなあ。とも思ってしまったよ。もったいない。
個人的にはラピュタみたいな雲から始まる一連の会話がツボでした。かつてはまりまくった「時かけ」の雲も俗にいう「二三雲」なんだよなー。

| 読書 | 21:08 | comments(1) | trackbacks(0) |
困ってるひと/大野更紗
大野 更紗
ポプラ社
¥ 1,470
(2011-06-16)

いろんなところで話題のこの本。私も読んでみました。

うん、評判になるのもよくわかる!これはよい本だ!
ていうか初のノンフィクションによる本屋大賞最終ノミネート&本屋大賞受賞とかそういうのがボンヤリ見えるくらい、っていうかこういう本が本屋大賞取るべきだと思う(私は図書館員だけどね)。

ビルマの難民についてフィールドワークをしていた大野さんが、謎の難病にかかってから退院するまでの、壮絶な日々がつづられております。ノンフィクションとしてすごいのも確かですが、読み物としてもきちんと起承転結があるのがよくできてます。「転」の展開には何とも言語化しづらい感覚がありました。「すごい」んだけど、どう「すごい」と説明したものやら。

全体を通じてたぶんもっと湿っぽく、切々とつづることはいくらでもできたのだと思うんだけど、まあ文体が明るいのだ。そこがいい。だって、切々としてたら絶対にこんなに話題になってないはずだし、読んでて変な罪悪感を感じない。普通の闘病系ノンフィクションとはその辺一線引いている。たぶん大野さんは読者に「かわいそう」って思われたくないし、そして自分自身を悲劇の主人公にしたりしたくないのだ。その辺もすごいわ。そのあたりはかつて「弱者を援助する」側の人間だった大野さんの感覚があってのことだと思います。まあ、文体が合わない人もたくさんいそうだけどね。作中でいうところの「ムーミンパパ」世代なんかは文体が合わないのでダメ本扱いするでしょう。
あとは実際に「困ってるひと」かなあ、それぞれ立場が違うし、言いたいことがあるでしょうからねえ…。

普通だったら泣き言しかかけないところを、とりあえず「それはそれだから」ということで思いのままに書いてしまう大野さんは、芯の強い人だといちいち、つくづく、読んでて思うし、聡明な人だとも思うわけです。
http://www.1101.com/komatteruhito/
ほぼ日での糸井さんとの対談なんて、糸井さんを食いそうな勢いでいいこと言ってるし。

人と付き合うこと、親と子、友人関係、医者と患者…そのあたりの関係の書き方もそうだし、難病患者と社会との関係の書き方も、なんとまあ、読者にいろいろと考えさせることでしょうか。
とにかくいえることは「生きてるってことは大事なことだなあ」ってことです。あとは、ネット社会じゃなければこの本は生まれてこなかったのかもなあ、なんてことも感じました。「命綱はiPhone」なんて描写が出てくるのですもの。ネット社会になる前は可視化されずに終わったかもしれない。
「ネット・バカ」を読んだ身としては、「ポプラビーチ」で読まずに本で読んだほうがいいと思いますが(笑)。

先に書いた通り、万人にがイイといえるような本ではないけども(先の理由の他には高学歴的なところが鼻につく人もいれば、隔離病棟の描写がどうもという人もいるだろう)、読んだ人がいっぱいいればいるほど、世の中のことをみんな考えるんじゃないかなあ、とか思える、そういう力のある本だと思います。無関心は一番よくないってことです。

| 読書 | 22:28 | comments(0) | trackbacks(0) |
クラウド化する世界/ニコラス・G・カー
ニコラス・G・カー,Nicholas Carr
翔泳社
¥ 2,100
(2008-10-10)

先日読んだ「ネット・バカ」が非常に興味深く読めましたので、そちらの前作となる、こちらの本を読んでみることにしました。

…。これは知的好奇心を満たされる書物であるし、読み物そのものとしても面白いことには間違いない、けれども、とってもうすら寒い気持ちになる書物でもあるのではないかと。
簡単に言えば、「ネットワークコンピュータ社会の到来に合わせて、社会がどう変容しているのか」という話。google・youtube・pixiv・facebook…これらの企業がいかにもうけを出しているのか、そして、従来メディアの立つ危機、従来の経済システムへの大きな変革が描かれています。

はたしてウェブのもたらした社会は、かつて描かれていたような「明るい未来」なのか。という問いかけを著者であるカーは投げかけています。ウェブという媒体は、その性格上自分のほしい情報"だけ"をピンポイントにいち早く、ゲットでできる者ですが、ほしい情報"以外"に触れないことはどのような問題をもたらすのか、考えてみたらわかることですよね。

自分は職場のシステム化にかかわってきたので、少しばかりわかりますが、十年前のサーバと今のサーバの性能差は歴然、それ以上にネットワーク周りの状況の変化も歴然としてるわけです。管理者周りでも感じられることは、エンドユーザでも当たり前に状況が変化してるわけで。
誰もが情報を発信できるようになった、無料のシステムで他人とつながったり、従来なら有料であったものを無料で手に入れられたり(それが合法であるか違法であるかはともかく)…。
これまでパソコンでやっていたこと、新聞で知っていたこと、テレビで見ていたこと、お店の窓口まで行っていたこと、全てブラウザでできるようになりました。
そして、人付き合いもネット上でできるようになったり、情報交換・情報収集もブラウザでできるようになりました。それは、Googleやfacebookといった仕組みを作っている側としては、「広告収入が上がる」ということで、自分が「この本イイです」「このお店美味いです」という情報も結局のところ、仕組みを作る側に「タダで協力している」ということです。
このブログだってそうなんだなあ(対して効果はないだろうけど)、と読みながら感じた次第です。

こうなったら仕組みを作る側は無敵。あくまで仕組みを作る側だけであって、そこでやった人の悪事は、やった人に会って、仕組みを作る側にはない、というわけで、現状の法制度との齟齬がその辺からいっぱい生まれてきているわけですね。
終盤になって書かれている「Googleの野望」は読んでてぞっとする。論理とかそういったものを一足飛びに飛び越えるネット社会はどこに行くのでしょうか、そして現実社会はどう変わっていくのでしょう…この本に書かれているように電気があることが当たり前の社会と電気が生まれる前の社会のとの大きな断絶があったように、ネットがあるのが当たり前の社会では、十数年前の社会とはどのような営みとコミュニケーションが断絶が生まれるのでしょうか。

そして、自分の仕事はネットに奪われていると自覚した図書館員の私は、数十年後どんな仕事をしているのか、不安になってしまう読書体験でありました。
とにかく司書になりたい人、司書になった人は読んでおいて損はない必読本かと。本というメディアの行方と、図書館活動の行方を知るヒントになるし、危機感を感じられるぞ。出版後数年たってから読んだ私でさえ、そう思うんですから。

| 読書 | 17:24 | comments(0) | trackbacks(0) |
マジアカ登校記録

このカテゴリーを書くのも久々だな。7〜11月の5か月分です。
7/25にオークランド、8/6に四日市AMP、それから間が空いて11/28にK-Cat鈴鹿で登校。隠居状態っすね。

結果。
ドラゴン組
優勝1(初めてのプラチナ)

魔神討伐(紅玉)
2位1
3位2
準決勝2
いずれも討伐には失敗

協力プレイ
古代のマンション 8F×1
あとはプレイなし

全国大会
7月下旬の全国大会
1位1回
あとはプレイなし

検定試験
SF AAASSSSA
お菓子 S
レトロゲーム AAS
ことわざ AA
ファッション AS

大魔導士7級

マジアカもしなくなると、その日常に慣れてしまっていましたが、テレビで「ワールドクイズクラシック」を少し観て、久々にマジアカしようと思いまして。とはいえ、これからもプレイのペースは上がらないと思います…。

| マジアカ | 19:51 | comments(2) | trackbacks(0) |
ネット・バカ/ニコラス・G・カー

久々に刺激的なタイトルの本を読んでみました。
邦題はこんなのですが、現代は「The Sharrows」となっており、「浅瀬」という意味です。なるほど、含蓄のあるタイトルだと、読んだ今は思います。
邦題は「ゲーム脳の恐怖」みたいなタイトルであるけども、この本はあの本よりはものすごくまっとうな内容で、学ぶべきところも多い本であります(少なくとも「独自研究」に毛の生えたあの新書とは違って、注釈だけで数十ページあるんだから内容はしっかりしています)。特に自分みたいな図書館で働く人間は読んで絶対に損はしないと思うよ。図書館に対する言及も正しく、いくつかの場所でなされていますし。っていうか、出てから1年経ってから読んでるんだから、図書館業界人としてはもっと早く読むべきだったとも思いますが。

今やありとあらゆる情報がネットに存在し、便利という言葉では片付かず、「不可欠」な存在になっている人が多いと思いますが、そこに対して支払われる脳の変容というリスクについてこの本は書かれています。作中でも引用されている、「プルーストとイカ」は読書と脳の関係でしたが、それのネット版という感じで、いうなれば「グーグルとウミウシ」です。

簡単に要約すれば、「ネットを活用することは、常に脳を『注意散漫』の状態に置く事であり、記憶に結びつく『深い集中』を阻害することになる。ネットに頼れば頼るほど、脳の回路はネット用に変容し、人は集中しなくなり、深い思考をすることからも、記憶している事柄が増える=知識が増えることからも遠ざかることになる」ということ。…身に覚えがありすぎる。この文章を読んでいるあなたも、身に覚えがありませんか?

それは、脳がネットを使わんがために「回路が変わった」ということ。そしてネットには中毒性があるということでもあります。ネットをしていて眠くなることはありませんが、読書をしていて眠くなるという時点で、同じ「文字を読む」という行為でも、働きかけている脳の部位は違うのだろうなと、個人的には思っていましたが、この本は様々な裏付けをもってそのことを証明しています。

本で読んだことは記憶に残るのに、ネットで見たことはそれほど記憶に残らない。いやまあ、全く残らないと言ったらうそになるでしょうが、「1時間の読書」と「1時間のネットサーフィン」を比べてみて、どちらが記憶に残る情報が多いか、「時間泥棒」度が高いか比べてみたら、それはどちらか明らかでしょう。
じゃあ、この本の著者であるカーは「ネットなんてやめてしまえ、1980年代よりも前の文明に戻ろう」ということを主張するわけではありません。「僕も、この便利さからは逃げられないし、この社会はもうネットがあること前提の社会だから、こうなってしまうことは不可避ですよ」というスタンス(この本を書く時には「ネット断ち」をしたそうですが、上梓した後はすっかり元に戻ってしまった、というエピソードが書かれています)。
あと時々ぼんやり思うのですが、今の高校生が受験勉強に集中するのって、大概強い意志が必要なんじゃないかなーと勝手に思ってしまいます。だって携帯電話が近くにあって、いつメールが来てもおかしくない状況で、勉強に集中しなくちゃいけないわけですからねぇ…。

「知」のあり方は変容している、と書かれていますが、それ以外にもネットが普及して変わったことがあります。たとえばコミュニケーション(つながりの「深さ」よりも「いつもつながっていること」が重要視される風潮)とか、物事の評価(過去の作品がデータベース化されたことで、その過去の作品を実際に読んでもいない受け手も含めて、オマージュやらネタバレやら、ちょっとした矛盾やらに「不寛容」になったと思います)とかね。でも、後戻りはできません。様々な発明にはそれを導入するリスクは存在します。それを凌駕する便利さがあれば、リスクは消されてしまうものですからね。

私はfacebookもtwitterもその気になればいつでもやれるのに、「ネットの海におぼれそうだ」と思って手を付けてなかったわけですが、この本よんで、「ネットの浅瀬でおぼれるわけもなく、ただ潜ることも出ることもできなくなるわけだな」と思いが少し変わりました。

で、ブログの文章さえ集中して書けなくなっている自分はかなりいただけない…。以前はもっとさらさらかけたのにねえ。文章書くための脳の回路はちゃんと生かしておきたい。

| 読書 | 14:22 | comments(0) | trackbacks(0) |