2009.01.22 Thursday
四とそれ以上の国/いしいしんじ
前作「みずうみ」を読んで、いしい作品の「これから」が気になっていましたが、こういう小説になりましたか。びっくりです。
そもそもこれまでのいしい作品を読んでいたものとしては「四国」という明確な舞台設定があるだけでも意外なのに、文体さえ大きく変わってしまっています。
これまでは児童文学出身だけに、やわらかい雰囲気で読みやすい文章だったのが、数ページに一度しか改行せず、しかも視点も時間も場所も絶えず変化しているような文章に変わっている…。これは強烈。簡単に読ませてくれません。
過去のいしい作品の雰囲気を感じられるのは、夜の暗さや、森の中の鬱蒼とした空気といった自然の描写と、独特の擬音の描写ぐらい。後はホント別の作家が書いたといったら信じてしまうくらい。
「塩」「峠」「道」「渦」「藍」の5つの物語が収録されてますが、いずれも四国という土地に密接に関わっている単語です。
「塩」では香川が、「峠」では愛媛から高知への鉄道が、「道」では八十八か所の巡礼道が、「渦」では、鳴門大橋と明石海峡大橋との往復が、「藍」では、四国全体が舞台になります。これらの文字が、様々なイメージでもって作中に現れます。擬人化されたり、実際の物として出てきたり…。一番読みやすいのは「渦」かなぁ。四国という土地を離れると、描写が普通に戻ってるからだろうね(病院のシーンを除く)。
描かれている内容も、とにかく塩気と土気に溢れ、土着的かつ、物凄く摩訶不思議で幻想的なイメージが作中に沢山沸いて来ます。そのことに対して、説明はありません。ただ、作中でそれが起きている。その一方で、四国という土地にまつわる、歴史上のあれやこれやも沢山出てきます。
物語にも大きな一本の筋というものがほとんどないようなもので、ただ四国という土地から沸きあがるイメージの集まりが、集まって形になった、という印象を受けました。いわゆる「マジック・リアリズム」というヤツですね。でも実際四国に3度行った事のある本州人からすると、四国って独特の何かがあるような気がするなぁ。八十八箇所とその巡礼道があるからなのかな?
日本の地方をネタにしてマジック・リアリズムで異形の小説を書いた、といえば古川日出男の「聖家族」が思い浮かびます。それまでのルートは全く別々でしたけれど、純文寄り「春樹チルドレン」の向かうところは同じだってことですかねぇ…?










