講師:根本彰(東京大学)
パネリスト:石原眞理(神奈川県立図書館)
須永和之(國學院大學)
谷口豊(日本体育大学図書館)
司会:竹内比呂也(千葉大学)
根本先生
日本図書館情報学会で検定を準備している。
実績を作りいずれ実施したいと考えている。その経緯について説明。
司書職養成の目的
専門職の養成、学士の教養?、リテラシー教育?、
大学院教育の一部(研究者養成・社会人などの専門職の研修)
現在の養成制度
司書課程は200以上、教諭課程は100以上、専門課程10弱、大学院10弱
アメリカと比較すると…
ALAでは修士課程認定される。認定大学は62。課程の選任教員は最低でも5人。ライブラリースクールのランキングもある。
日本では、公共図書館を前提にした養成24単位。
最低2名の専任教員を設置するよう「指導(実際はほとんど1名)」。
資格にたいする評価基準があいまい。国会資格であるが、個々の教員、大学に資格を与えるかどうかがゆだねられ、カリキュラムの基準、大学による自己評価などがあいまい…。
LIPER提言
将来的には国際水準に合わせて大学院レベルでの図書館情報学の専門教育を標準にすべき。
そこに達するまでは、できるだけ個々の養成課程において、工夫して館種を越えた共通の基礎領域を扱えることを目標にする。
教育評価に使用できる図書館情報学検定試験の実施を検討する。
司書課程のコア領域(図書館情報学基礎、情報利用者、メディア、サービス、システムなど)を司書課程で学び、修士課程で情報専門職領域を学べるように。
試験の提案。
受験者は、資格取得者、取得中の者としているが、別に広く開いてもいい。
試験方法は 多岐選択式。
予想される効用としては
自己評価の機会となる。
学習目標の明示、就職の際にツールとして使える
教授内容及びレベルの標準化
採用の際の評価に使える
教育の質の向上につながる
背景
評価要素の明確化
社会に定着している「試験制度」を無視できない。
2007・2008年に準備試験を実施。
他の試験はどう実施されているか、スライドで紹介
2010年度は有料公募制により秋に実施。
課題は 受験場の設置と実施体制・受験料・広報報・合否判定ないし結果の通知方法(なんらかの目安はつける)・問題解説書の刊行など
図書館情報学の標準的教科書を。
検定試験についての意見
石原さん
*検定試験の問題を送られて解いてみた。8割程度の正当率。かなりマニアックなことも問われているように感じたが、これはどこの図書館でも教えているようなことなのか。問題はかなり広範囲。これに対応する問題集・テキストがあればいいのでは?学ぶ方、教える方にそれぞれやりやすい。
問題文の文章が難しい。そもそも問題文への読解力を必要とする。知識がなくても問題文を読み込めば答えられる問題もあったりする。また、図書館をとりまくトレンドを知るための目安になる。
問題によっては抽象度に差がかなりある(答えがはっきりしているものと曖昧なもの)。
*検定試験そのものについて
学習の到達度をはかるための、就職のための?
だれがこの試験を受けるのか?
今後どれくらいの受験者が見込めるのか。
公共図書館の業務に直接関係のあるのは問題のうちどれくらい?
委託できる?負担は大きくないか?
須永さん
司書資格を取っても働けない「野良司書」の増加について書いたら反響が大きかった。
まずこの試験がどういう人に必要なのか。
これから就職する人たちを中心にして考えてみたい。
公立図書館の職員は司書である以前に公務員である。試験は一般教養と専門試験だが、専門試験が政治経済方面である割合が高い。文学部の学生が多くを占める司書課程。傾向として、政経法律に弱い…。公務員である上では社会科学は常識。公務員には実は図書館情報学検定試験で問われている部分はあまり必要ない?そこで、試験に政経法律(図書館経営)などを盛り込んで欲しい。
国立大学の図書館職員枠には「司書」資格は要件として必要ない。資格要件に変わるものとして、この試験の実績を上げてみたらどうか。
すでに職に就いている人には、資質の向上に使えるだろう。
図書館の種類ごとに検定試験を行うことになるのか。学校図書館はどうなるのか(図書館以上に教育施設という位置づけ)。今後の課題では。
高得点をとると、図書館側で採用を控えることにもなりかねない。「優秀な部下」をおそれる動き…。
(こんなことを言われると怒られるかもしれないが、と前置きした上で)働き手が女性が中心になっているからか?業界の妙な平等主義がある。出る杭は打たれやすく、上下関係はできづらい。「みんな一緒に同じサービスをやりましょ」という空気がある。欧米のような職階制度はなかなか…。
この試験を行うことで職場の構造を変えられるかも?
今後の問題として、グレード(等級)を作るかどうか。教科書は必要。また、司書課程のテキストに役立てるようなものとして。
就職を目指す者やだけでなく、司書過程の指導教員や現職も、みんな受けて試験に提言して欲しい。
谷口さん
専門職制度への個人的関心
司書資格は「失敗」?公文書管理に関する専門職の資格制度を確立する研究集会のなかで、図書館司書は準専門職扱い。また資格付与の「詐欺に等しい」課程がある。
他の資格では、免許更新制度や、資格取得に4年から6年かかる(志願者減)といった流れがあるのに…。
業界から意見がないと法・制度改正もむずかしい。
日図協部会での印象。なかなかドラスティックにかわれない。
大学側では「追加資格」として、担当教員は「職業生活(食い扶持)」として資格を捉えている。上級司書についても足踏み…。フラットでいいという考え。そこを一歩踏み越えるべきでは?
大学教育のユニバーサル段階。その中での高度な養成制度を目指さないのは…その状態での「専門職」とは?
大学組織における資格の扱い。
人事担当の本音:資格がなくてもポテンシャルが高い人がいい。
世代交代要員と、再生産構造:資格は「本に興味がある」くらいの扱いを受けてる。
官僚組織のジェネラリスト思考。
主題司書の可能性。
専門主題を別に持った人で司書の見識が積まれていれば…図書館の専門分野に入ることができるのでは?大学の図書館でもそういうかたちで適用できる?
大学図書館では資格認定の試みをしている。
パネルディスカッション
自主努力をしないと制度改革につながらない。
議論するツールとしての専門職試験。
中長期的には職制の確立と、職の地位向上…。
問題が専門的すぎるのはそうだろう。まだまだ試行錯誤の段階。教育者への問題提起(これくらい知っててくれ、教えて欲しい)という一面もある。
枠組みとしては「基礎的な部分」となるので、法律政治経済は入っていない(司書のカリキュラムと比べ、そういう部分を入れることは考えるべきだろうけども)。どこまで踏み込めるかはわからないが、そういう視点はこの試験で問う8つの分野の一部分として入っている。
公立の常勤現場の人が受ける気になるには。
非常勤の方は受ける気になるが、地位に甘んじている常勤の人はともかく、最近動向を知るための目安や試験があるのは受ける動機になるだろう。
研修はいろいろなところで実施されているが、そことの関連でキャリアパスにつなげられないものか。
上級司書が検討されているが、そことの区別が付いていない人も結構居るのでは。棲み分けをはっきりした方がいいのでは。
大学現場の人が受ける気になるには
業務に特化した職員を求めるので、試験内容もこのような全般的知識ではなく、専門分野のコアに特化したものを求めるのでは。
この試験が何を求めるのか。
図書館は女性の職場で「文学部あがり」というのが正直な現状。IT活用やシステム構築などに関する問題についていけていない人がいっぱい。そこを埋め合わせられるかどうかが重要。図書館情報学を広くちゃんとわかっている人、ポテンシャルのある人がわかるのかどうか、図書館経営をする側としては気になる。
図書館情報学は文系的なところから技術的なところまで相互関連して広く存在する。図書館に対する「ものの考え方」を共有できる基盤として試験を活用したい。
教科書を越えた体系だった知識を。
図書館情報学におけるそれぞれのテーマを橋渡しできるような問題を。図書館サービスに興味を持つが、資料の問題に関しては興味を持たない学生が多いので、そのあたりも目配りを。出題範囲はいろいろ広く幅をとって大変なように感じるが、世界レベルで見ると遅れているのが現状だ。
教育課程と試験資格の持つ意味はその資格を持つ人が何をできるのか。「利用者のできないこと」をできることが専門職だろう。この試験には図書館員の競争意識を植え付けることを期待したい。
学生のレベルに合わせて教えているが、今の資格は「短大卒」レベルなのに、今の現場に求められるレベルはもっともっとハードルは高い。課程が現場、利用者のニーズに合わせてレベルをあげねばならない。検定試験はそうあるべきためのもの。
図書館員に「どういうスキルと資質が必要か」という大きな議論の中で機能させるためにも、ぜひ試験は実施したいと考えている。
感想
自分の図書館員としての資質や知識の物差しとなるものがないと常々感じていたので、こういった試験が実施されることは喜ばしい。実施されるならば受けてみたいものである。
それと、一部意見にあった、「現在の図書館の職場風土」に関する意見は、首肯せざるを得ないです・・・。公共図書館界に漂う空気に感じていた微妙な違和感がハッキリしたような気がします。別に自分はマッチョ二ズムでもありませんしミソジニー溜めてるわけでもない「自称草食系」なのですが…。









