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クラウド化する世界/ニコラス・G・カー
ニコラス・G・カー,Nicholas Carr
翔泳社
¥ 2,100
(2008-10-10)

先日読んだ「ネット・バカ」が非常に興味深く読めましたので、そちらの前作となる、こちらの本を読んでみることにしました。

…。これは知的好奇心を満たされる書物であるし、読み物そのものとしても面白いことには間違いない、けれども、とってもうすら寒い気持ちになる書物でもあるのではないかと。
簡単に言えば、「ネットワークコンピュータ社会の到来に合わせて、社会がどう変容しているのか」という話。google・youtube・pixiv・facebook…これらの企業がいかにもうけを出しているのか、そして、従来メディアの立つ危機、従来の経済システムへの大きな変革が描かれています。

はたしてウェブのもたらした社会は、かつて描かれていたような「明るい未来」なのか。という問いかけを著者であるカーは投げかけています。ウェブという媒体は、その性格上自分のほしい情報"だけ"をピンポイントにいち早く、ゲットでできる者ですが、ほしい情報"以外"に触れないことはどのような問題をもたらすのか、考えてみたらわかることですよね。

自分は職場のシステム化にかかわってきたので、少しばかりわかりますが、十年前のサーバと今のサーバの性能差は歴然、それ以上にネットワーク周りの状況の変化も歴然としてるわけです。管理者周りでも感じられることは、エンドユーザでも当たり前に状況が変化してるわけで。
誰もが情報を発信できるようになった、無料のシステムで他人とつながったり、従来なら有料であったものを無料で手に入れられたり(それが合法であるか違法であるかはともかく)…。
これまでパソコンでやっていたこと、新聞で知っていたこと、テレビで見ていたこと、お店の窓口まで行っていたこと、全てブラウザでできるようになりました。
そして、人付き合いもネット上でできるようになったり、情報交換・情報収集もブラウザでできるようになりました。それは、Googleやfacebookといった仕組みを作っている側としては、「広告収入が上がる」ということで、自分が「この本イイです」「このお店美味いです」という情報も結局のところ、仕組みを作る側に「タダで協力している」ということです。
このブログだってそうなんだなあ(対して効果はないだろうけど)、と読みながら感じた次第です。

こうなったら仕組みを作る側は無敵。あくまで仕組みを作る側だけであって、そこでやった人の悪事は、やった人に会って、仕組みを作る側にはない、というわけで、現状の法制度との齟齬がその辺からいっぱい生まれてきているわけですね。
終盤になって書かれている「Googleの野望」は読んでてぞっとする。論理とかそういったものを一足飛びに飛び越えるネット社会はどこに行くのでしょうか、そして現実社会はどう変わっていくのでしょう…この本に書かれているように電気があることが当たり前の社会と電気が生まれる前の社会のとの大きな断絶があったように、ネットがあるのが当たり前の社会では、十数年前の社会とはどのような営みとコミュニケーションが断絶が生まれるのでしょうか。

そして、自分の仕事はネットに奪われていると自覚した図書館員の私は、数十年後どんな仕事をしているのか、不安になってしまう読書体験でありました。
とにかく司書になりたい人、司書になった人は読んでおいて損はない必読本かと。本というメディアの行方と、図書館活動の行方を知るヒントになるし、危機感を感じられるぞ。出版後数年たってから読んだ私でさえ、そう思うんですから。

| 読書 | 17:24 | comments(0) | trackbacks(0) |
ネット・バカ/ニコラス・G・カー

久々に刺激的なタイトルの本を読んでみました。
邦題はこんなのですが、現代は「The Sharrows」となっており、「浅瀬」という意味です。なるほど、含蓄のあるタイトルだと、読んだ今は思います。
邦題は「ゲーム脳の恐怖」みたいなタイトルであるけども、この本はあの本よりはものすごくまっとうな内容で、学ぶべきところも多い本であります(少なくとも「独自研究」に毛の生えたあの新書とは違って、注釈だけで数十ページあるんだから内容はしっかりしています)。特に自分みたいな図書館で働く人間は読んで絶対に損はしないと思うよ。図書館に対する言及も正しく、いくつかの場所でなされていますし。っていうか、出てから1年経ってから読んでるんだから、図書館業界人としてはもっと早く読むべきだったとも思いますが。

今やありとあらゆる情報がネットに存在し、便利という言葉では片付かず、「不可欠」な存在になっている人が多いと思いますが、そこに対して支払われる脳の変容というリスクについてこの本は書かれています。作中でも引用されている、「プルーストとイカ」は読書と脳の関係でしたが、それのネット版という感じで、いうなれば「グーグルとウミウシ」です。

簡単に要約すれば、「ネットを活用することは、常に脳を『注意散漫』の状態に置く事であり、記憶に結びつく『深い集中』を阻害することになる。ネットに頼れば頼るほど、脳の回路はネット用に変容し、人は集中しなくなり、深い思考をすることからも、記憶している事柄が増える=知識が増えることからも遠ざかることになる」ということ。…身に覚えがありすぎる。この文章を読んでいるあなたも、身に覚えがありませんか?

それは、脳がネットを使わんがために「回路が変わった」ということ。そしてネットには中毒性があるということでもあります。ネットをしていて眠くなることはありませんが、読書をしていて眠くなるという時点で、同じ「文字を読む」という行為でも、働きかけている脳の部位は違うのだろうなと、個人的には思っていましたが、この本は様々な裏付けをもってそのことを証明しています。

本で読んだことは記憶に残るのに、ネットで見たことはそれほど記憶に残らない。いやまあ、全く残らないと言ったらうそになるでしょうが、「1時間の読書」と「1時間のネットサーフィン」を比べてみて、どちらが記憶に残る情報が多いか、「時間泥棒」度が高いか比べてみたら、それはどちらか明らかでしょう。
じゃあ、この本の著者であるカーは「ネットなんてやめてしまえ、1980年代よりも前の文明に戻ろう」ということを主張するわけではありません。「僕も、この便利さからは逃げられないし、この社会はもうネットがあること前提の社会だから、こうなってしまうことは不可避ですよ」というスタンス(この本を書く時には「ネット断ち」をしたそうですが、上梓した後はすっかり元に戻ってしまった、というエピソードが書かれています)。
あと時々ぼんやり思うのですが、今の高校生が受験勉強に集中するのって、大概強い意志が必要なんじゃないかなーと勝手に思ってしまいます。だって携帯電話が近くにあって、いつメールが来てもおかしくない状況で、勉強に集中しなくちゃいけないわけですからねぇ…。

「知」のあり方は変容している、と書かれていますが、それ以外にもネットが普及して変わったことがあります。たとえばコミュニケーション(つながりの「深さ」よりも「いつもつながっていること」が重要視される風潮)とか、物事の評価(過去の作品がデータベース化されたことで、その過去の作品を実際に読んでもいない受け手も含めて、オマージュやらネタバレやら、ちょっとした矛盾やらに「不寛容」になったと思います)とかね。でも、後戻りはできません。様々な発明にはそれを導入するリスクは存在します。それを凌駕する便利さがあれば、リスクは消されてしまうものですからね。

私はfacebookもtwitterもその気になればいつでもやれるのに、「ネットの海におぼれそうだ」と思って手を付けてなかったわけですが、この本よんで、「ネットの浅瀬でおぼれるわけもなく、ただ潜ることも出ることもできなくなるわけだな」と思いが少し変わりました。

で、ブログの文章さえ集中して書けなくなっている自分はかなりいただけない…。以前はもっとさらさらかけたのにねえ。文章書くための脳の回路はちゃんと生かしておきたい。

| 読書 | 14:22 | comments(0) | trackbacks(0) |
フィッシュストーリー/伊坂幸太郎

なんだかずいぶん久々に読む気がする伊坂作品。
新潮社から出た作品には「a **」という副題がついていますが(「重力ピエロ」にはついてないけど…さしづめ「a brother」ってとこかね?)、こちらは「a story」。

まあ何というか、伊坂さんの小説読んだなー感がすごくする短編集でした。4作とも物語の内容はバラバラですが、ほかの作品とどこかでつながっているし(他の作品以上に作品間リンクがめちゃくちゃ多い気がする…)、文章や会話、作中の例えもこじゃれている。何より「伊坂風」という独特の味がある。

「動物園のエンジン」は叙述トリック。
「サクリファイス」は土着もの。
「フィッシュストーリー」は時間軸もの(風が吹けば桶屋が儲かる、的なファンタジー)。
「ポテチ」は、「何で彼はそうなったのかが後でわかる」タイプの話。

個人的には「フィッシュストーリー」と「ポテチ」が好きです。どっちも映画化される/された話ですな。フィッシュストーリーの映画は小説と結構違うらしいけど…。いい話だけど暑苦しくなくて、かつ押しつけがましくないところが好感持てますね。

伊坂作品名物の、作品間リンクですが、気づいたのは「アヒルと鴨…」「ラッシュライフ」「オーデュボンの祈り」「重力ピエロ」あたりだけども、ファンサイト見てみたら、つながり具合で気づいていないところがいっぱいあった。読んだ記憶とはあやふやなものですなあ。

| 読書 | 01:18 | comments(0) | trackbacks(0) |
ゴランノスポン/町田康

町田康の最新短編。7編の作品が収録されています。ご覧のとおり表紙は奈良美智。読んだ後に作品のイメージと比べると、うーん、あんまりマッチしてないような…と思うのは自分だけかな。

昔に比べるとハチャメチャ感は落ちた気がしますが、相変わらず変な話を書きますなあ。言語感覚と文章のリズム感が楽しい、なのに内容には破滅感が漂います。一方でたとえや語彙に笑ってしまう。んで、今という空気もきっちり書いているところが町田さんのいいところですね。

個人的に印象に残ってるのは「楠木正成」「ゴランノスポン」「一般の魔力」「末摘花」かなー。
「楠木正成」「末摘花」は伝奇小説ぽいのと、源氏物語のリメイクなのですが、町田さんらしい語彙やノリが楽しいです。室町や平安の話なのにカタカナ名詞がバシバシ出てきます。源氏物語は筋を知ってても通読はしたことないのですが、町田版源氏なら全部読んじゃうかも。
「ゴランノスポン」「一般の魔力」は、いやーな話です。
「ゴランノスポン」は、読んでて痛いです。手の届く範囲のハッピーばかり求めてネガティブ排除、苦労は嫌いな若者の情けなさを客観的に描くとこうなるのかーと。
「一般の魔力」は登場人物の自分勝手さに読んでてむかむかしますが、こういう人間いないとも限らないと思わされるとともに、自分にこういう側面がまったくないと言ったら嘘になって、気がめいるよ…。



| 読書 | 23:28 | comments(0) | trackbacks(0) |
平成猿蟹合戦図/吉田修一
吉田修一
朝日新聞出版
¥ 1,890
(2011-09-07)

吉田修一の最新作。今回は「週刊朝日」に連載されていたものです。ホントいろんな媒体に連載小説書いてるなあ。

作品によって路線はバラバラになる吉田作品ですが、本作はバリバリのエンタメ路線です。
大阪・東京・長崎(五島)・秋田(大館)それぞれの出身者による群像劇。
学生・ばあさん・水商売・チェリスト…職業もバラバラ。視点はその都度切り替わり、舞台もガラリと変わることもある。吉田作品の群像劇はこれまでもいろいろ読んできたけど、やっぱりうまいわ。
「パレード」や「ひなた」もそうだったけど、章立てと語り手の入れ替え・配置がピチっとはまっているのだよねえ。で、その都度、登場人物のつぶやきが方言で書かれる(そこは別フォント)のだけど、なんか「うんうん、なるほどな」って思います。ふと思う感情の切り取り方を掬うのがうまいんだよねえ。
そういえば今回の作品は吉田作品によく出てくる同性愛者がまったく出てこない話だったなあ。その点は珍しいなーと思った。
登場人物はみんな魅力的…主人公格の純平はさることながら、特に園さん有能すぎ。わき役だけど垣内小者すぎ。

情景描写は相変わらず上手い。新宿の街の雰囲気とかホント上手いよなーって思う(実際歌舞伎町なんて足踏み入れたこともないから何でそう思うのか自分でもよくわからないんだけどね)。

ストーリーそのものは、最初の動き出しから何度かの転換を経て、最終的には最初のシーンを「語られて」終わります。そこの至るまでの動きのめまぐるしさよ。半分すぎてからは一気読みでした。
めまぐるしく物語は動くけれども、強引さはそんなにないのが筆力のなせるところ。吉田作品の中でも1番といっていいくらい爽快な話になっていると思う…けど、まあその内側には暗いものが内包されていますがねえ(一部登場人物は清濁併せ呑みまくっております)。「悪人」にはなかった救いや希望のようなものがこの物語にはあると思う。
とはいえ、やっぱこんな話あるのかな?吉田作品としてはおとぎ話ぽすぎ?とも思ってしまう部分はあるけどね。まあタイトルがおとぎ話からとられてるので、まあおとぎ話を狙って書いたんでしょうけれども。…で、読み終えるとやっとタイトルの意味が分かるという仕組みですよ。蟹は誰で猿は誰だったのか…それは読んでみてのお楽しみということで。

本屋大賞最終ノミネートに来そうな予感がします。

| 読書 | 23:14 | comments(0) | trackbacks(1) |
ソーラー/イアン・マキューアン

自分の中では現役最高峰クラスの文学者である、イアン・マキューアンの最新作です。

海外で新作出たというニュースが出た時から、翻訳が出るのをものすごく楽しみにしてました。で、読みました。うん。やっぱりマキューアンは外さない。うまい。皮肉と教訓、ジョークもたっぷりです。

ただねえ、今回の作品はあまりにも登場人物に感情移入できなかった(まあ感情移入できたらそれはそれで大問題ですが)。理系の学者バカ系、欲望むき出しダメ男って感情移入できないわー…とはいえ、彼の人間としての「汚さ」がよくわかって身につまされるんだよなあ。作者は主人公に感情移入させずに、シニカルな視点を持ってもらおうとしてるのはわかるんですが…。仕方ないのかなあ。
作中にちりばめられたジョークを笑っていい作品なのだが、テーマ(環境問題と人の欲望)を考えると笑うに笑えない、結末はやっぱり後味がよくない。相変わらずマキューアンはいじわるな作家さんだね、そこがたまらんのですけどね。

しかしまあ、相変わらず部分部分の空気の描き方はすごい!特にポテチをめぐるあのシーンは、筆力の無駄遣いだと思いました。あとはいくつかこれまでの作品でもモチーフになった対比が出てきましたね。「男と女の違い」「理系と文系の思考と嗜好と志向の違い」「がり勉とマッチョ」とか。いちいちうーむ…と思わされます。

次の作品までまた数年待とう。その前に、まだ読んでいない「愛の続き」を読まなきゃなあ。

| 読書 | 22:07 | comments(0) | trackbacks(0) |
刑務所図書館の人びと/アヴィ・スタインバーグ
刑務所・図書館・ハーバード・司書。なんかすごい文字がタイトルに踊っております。しかもこれ、ノンフィクションなんですよ。海を越えて、かつ館種の違う図書館現場をのぞいてみたい気持ちで手に取りました。が、じっくり読み進めていたら、読み終えるのに2ヶ月くらいかかってしまいました。

いやあ、ものすごい世界をのぞき見した気分です。アメリカの刑務所の空気、そこに集まる受刑者の面々、そしてそこの図書館で働くアヴィの過去。どれも面白い。そしていちいち引っ張ってくる教養書のタイトルと書き手の羅列に「よっ!ハーバード!」と思いながら読んでしまうのは…自分だけか。

刑務所図書館を「図書館」として使う受刑者はそれほど多くない。コミュニケーションの場として使う者が殆ど…図書館で働くものとしては色々思うところがあるねえ。特に、彼がエピローグで訪ねた平日日中の図書館に関する言及は…そうだ!物凄くその通りだ!と思った。

共有空間である図書館の本にメモを挟んで情報のやりとりをする(「凧」という名がついている)のが常識になっていたり、窓ガラス越しの通信で男性受刑者と女性受刑者がメッセージを交わしたり…といったエピソードがいちいち興味深い。ギャングにはギャングの、ラッパーにはラッパーの、ハスラーにはハスラーの美意識があるわけだ。そして、悪く言えば「社会の掃き溜め」である刑務所の中での受刑者たちのプライドの保ち方もそれぞれ…。隔離棟の受刑者を見下ろす一般棟のエピソードは重く響きました。

アヴィが刑務所図書館でであった受刑者たちは様々な個性を持っており、更生に努めるもの、自分の芯は変わらないものなど、いろいろな受刑者が出てきます。個人的にはC.Cトゥー・スイートが興味深い人物でした。こんな人がホントにいるんだねぇ、と。
ただ、どの受刑者も悪いことをしたからここにきているわけで、フォーカスされた受刑者のエピソードは、綺麗ごとで終わるような話は全然ありません。うーん。
そして、ユダヤ正教徒として若いころ宗教に殉じていたアヴィの過去も面白い。ユダヤ教徒の信仰を詳しく描いた書物ってなかなか読まなかったからね。そして、宗教の道からドロップアウトした現在のアヴィ本人の心の揺れ動きに読者も善悪のラインを揺さぶられることになると思います。
刑務所を出たアヴィは、外でも刑務所とつながっているわけで…。シャバで元受刑者と出会うシーンはいずれも印象的。人生はドラマのようにはいかないものだなあ、と思わされますよ。

最終的には、アヴィ本人もとある出来事をきっかけに刑務所図書館を去ることになります。
この本は、元受刑者たちに贈る「凧」でできた一冊の本なのかも、って読後に思いました。

しかしまあ、こんな職場で働け、と言われると…。私だったら3日で心が折れそうです(苦笑)。
| 読書 | 23:11 | comments(0) | trackbacks(0) |
夢みるピーターの七つの冒険/イアン・マキューアン

マキューアンが、初めて子ども向けに書いた作品。
「空想癖」で何時間も遊べてしまうピーター君の頭の中で起こったおはなしたちです。

なんというか「きれいなマキューアン」。他の作品で出てくるシニカルな視点や人生の失敗について語られたりしてるところがない!
そして、子どもの妄想具合がリアルだ(微妙なスケールの小ささとかね)。おっさんになってからこんなに「こどもの考え」が筆に表せる凄味がマキューアンならでは。部屋にある人形に襲われる空想や、飼い猫と意識を交換させる空想とか。個人的には「子どもの目から見た赤ちゃん」の書き方が凄いリアルだと思った。そしてまた赤ちゃんと意識が入れ替わったときの描写が、ホントにもう、うまいんだよね。

で、何よりも読んでいて目の前でその空想が繰り広げられている気にさせられる文章が素敵だと思う。
でもね、最後の大人になる空想は「大人が書いた空想」だと思っちゃったんだけど…。まあピーター君も作中で成長してるので「思春期への入り口にさしかかりましたー」ってことだからあれでいいのかな。

想像力は偉大だ。そう思わされるいい小説です。子と大人で交換読書しても面白そうである。

| 読書 | 01:17 | comments(0) | trackbacks(0) |
セメント・ガーデン/イアン・マキューアン
マキューアンの出世作ともいわれる、初の長編小説。「子供たちの退廃的な楽園」のお話です。
きょうだい4人が孤児になって離れ離れになるのを防ぐために、死んでしまった母親を地下に埋めてしまうという、お話。これも書かれたのが1970年代。やはり時代の先を行ってるなあ。

性的倒錯やら、近親相姦やら、親の埋葬やら、子供のモラトリアムやら、まあなんとセンセーショナル。思春期や幼児期の成長が大人や隣人の指導なしで好き勝手にやって歪みに歪むとこうなるよーって感じなお話である。

でも、いうほど猟奇的な話ではない。ちょっと荒んでるとは思うけど、作中の書かれ方は意外と淡々としてるんだよね。気が付いたらクライマックスが来てて、そこで終わるんだ。退廃なのに、すごくきれいな終わり方だなー、と。散るときが美しいけど、グロテスクな花(そんなのないけど)というたとえをしたくなるような小説でした。

| 読書 | 01:05 | comments(0) | trackbacks(0) |
最初の恋、最後の儀式 /イアン・マキューアン
マキューアンのデビュー短編集。この時マキューアン27歳、1970年代中盤に刊行された作品です。
日本ではこれ以外にはマキューアンの短編集って刊行されていないけど、本国イギリスでは出版されているんだろうか…?
デビュー作を含む初期作品ばかりで、初期マキューアンは「古き良き英国文学」から逸脱した存在だったのがよくわかる作品ばかり。近親相姦やら、母殺しやら、前衛芸術やら、異常性癖とかそういった感じの作品群です。この作品集だけ読むとあんたマザコンか?と思うくらい母性がそれぞれの作品に横たわるモチーフになっております。
しかし、「エキセントリック」な舞台立てで、「カタルシス」のない話ばっかなので、読んでて疲れたのも事実だわ。でも出た時代を考えると、もうすごい衝撃だったんだとも思う。

個人的には「押入れ男は語る」と「装い」がまじめにくるっていてすげえと思ったなあ。

でもやっぱ、いい意味で「枯れて」きている今のマキューアン作品のが好きだと再確認させられる作品集でもありました。


| 読書 | 00:56 | comments(0) | trackbacks(0) |